ニューラルエンジンはAI時代の覇者となり得るか
先日発売されたiPhone8、およびiPhoneXに搭載されたSoC『A11 Bionic』
前モデルに該当する『A10 Fusion』に引き続き
速さ重視の高性能コアと省エネ性能重視の高効率コアの2つで構成されており、
高性能コアは最大1.3倍、高効率コアは同1.7倍の速さで動作する、という。
一見大きな進化には感じられないが、
業界では「iPhone発売10年目にして最大の変化」と捉える向きも少なくない。
その正体こそが『ニューラルエンジン』だ。
IT業界においてニューラルと言えばニューラルネットワークを指し
人間の脳内の神経回路をシミュレーションし実現するための数学モデルを意味するが、
A11はこの「ニューラル」の名を冠した回路を、その一部として保有することとなった。
即ち世界的に普及しているモバイルデバイスにおいて
“人工知能に最適化されたハードウェアを備えた初めての製品”として業界内では畏怖の念で以って今回のリリースが迎えられることとなったのだ。
画像や音声の処理に留まらず、機械学習アルゴリズムへの依存度が高いAR(拡張現実)や
今後普及が見込まれる自動運転車への応用など、
人工知能に特化したハードウェア(回路)をめぐる開発競争は今後苛烈を極めることは必至だ。
画像半導体に強みを持つ米NVIDIA社、スマートフォン向けプロセッサで世界シェアNo.1の米クアルコム社をはじめ、
韓国のサムスン電子、中国のファーウェイ、更にインテルやマイクロソフト、グーグルに至るまで、
IT大手は例外なく同市場に注力していく意向を発表している。
一方で『A11』を搭載したデバイスについては今秋発売したばかり。
当のApple社もニューラルエンジンの詳細については未だ多くを語らないままだ。
現時点で明らかになっているのは
iPhoneXに標準装備された顔認証機能でロックを解除をしたり、
カメラで読み取った人の表情をアニメーション化し絵文字に変換する「Animoji」に同回路が使われている、程度にとどまる。
そう遠くない将来、前述のIT業界の巨人らが『ニューラルエンジン』と同様の製品を続々と市場に投入することになるだろう。
果たしてApple社の『ニューラルエンジン』は独走状態を保てるのか。
今後も人工知能をめぐるハードウェアの最新動向について引き続き注意深く見守っていきたい。